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最高裁判所第一小法廷 平成8年(あ)600号 判決 1997年1月30日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人半田和朗の上告趣意は、道路交通法六七条二項の規定による警察官の呼気検査を拒んだ者を処罰する同法一二〇条一項一一号の規定が憲法三八条一項に違反するというものである。しかしながら、憲法三八条一項は、刑事上責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものと解すべきところ、右検査は、酒気を帯びて車両等を運転することの防止を目的として運転者らから呼気を採取してアルコール保有の程度を調査するものであって、その供述を得ようとするものではないから、右検査を拒んだ者を処罰する右道路交通法の規定は、憲法三八条一項に違反するものではない。このことは、当裁判所の判例(最高裁昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日大法廷判決・刑集一一巻二号八〇二頁、最高裁昭和四四年(あ)第七三四号同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五五四頁)の趣旨に徴して明らかである。所論は理由がない。

よって、刑訴法四〇八条、一八一条一項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 高橋久子 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄)

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